【Cécile】
001:笑 プロヴァンス訛りで話す人たちの笑顔に会って夏がはじまる
002:一日 クロスワードパズルひとつで一日は長くなったり短くなったり
003:助 見るからに一癖ありげなまなざしの助演女優のほうに引かれる
004:ひだまり 選ぶならひだまりよりも水たまり裸足になって歩きたいのは
【Elsa】
005:調 かしましく調弦されるヴァイオリン賑わうカフェの談笑のごと
006:水玉 十代の少女とおなじ水玉のリボンと気づきそっとほどいた
007:ランチ 避暑地には避暑地の作法 朝食を兼ねたランチをベッドの上で
008:飾 飾らない言葉もあまいささやきも恋人からは聞かせてほしい
【Cécile】
009:ふわふわ シャンプーを「ふわふわ」と呼び母親の指の動きに髪をゆだねた
010:街 街角に貼られたダンスパーティのビラ初めてのドレスで行こう
011:嫉妬 ラジオから古いシャンソン恋しさや嫉妬を鳥になぞらえながら
012:達 ささやかな達成感で振り返るいま自転車で来た坂道を
013:カタカナ カタカナか漢字か区別がつくように力と書くとき力を込める
【Elsa】
014:煮 大鍋の野菜とろとろ煮崩れてゆくそばで読むロマンス文庫
015:型 つまらない夏だったっけ兄たちの模型づくりを手伝えなくて
016:Uターン 南仏の生まれだったらパリを捨てUターンしても構わないけど
017:解 明日はまだ鼻歌まじり難解なことはあさって気にすればいい
018:格差 世代間格差を嘆く恋人のくちびるに差し入れるポッキー
【Anne】
019:ノート もう開くこともないのに捨てられぬノートにいくつ詩人の名前
020:貧 微苦笑で思い出すこと貧しさを美化してひそかに憧れていた
【Cécile】
021:くちばし くちばしと父がからかう不満げな顔で見上げる私のことを
【Elsa】
022:職 とりあえず職業欄に特大のひまわりの絵を描き入れておく
【Cécile】
023:シャツ 黄のシャツは勝者のあかしTVでは連日ツールドフランスばかり
【Elsa】
024:天ぷら 山盛りの天ぷらきれいにたいらげて増す一方の座の賑やかさ
025:氷 氷にも炎にもなる激しさの主人公から目がはなせない
026:コンビニ 〒や卍はあるのにコンビニの記号が地図にまだないなんて
【Cécile】
027:既 ありふれた既製服から思いきりはみ出している私はわたし
028:透明 透明にしておくという約束の父とのあいだに秘密がきざす
029:くしゃくしゃ くしゃくしゃにしたりされたりした後に互いの姿を見て笑い合う
030:牛 牛乳が熱くてできた火傷とはちがう痛みの舌をなだめる
【Anne】
031:てっぺん てっぺんに苺がのったケーキめく少女ら笑いさざめくときに
032:世界 受け継いだ良識に似て古びても捨て得ぬ『世界文学全集』
【Cécile】
033:冠 「私たち」と呼ぶをためらう関係の不定冠詞のようなあやうさ
034:序 物事の順序を説かれマニキュアをため息重ねて乾かしている
【Elsa】
035:ロンドン バカンスの最中でさえロンドンの市況を絶えず気にかける人
036:意図 要注意図に乗りすぎると冗談のつもりがケンカで終わってしまう
【Anne】
037:藤 色の名の豊かなることあかるきを藤色濃きをむらさきと呼ぶ
【Cécile】
038:→ 大袈裟にしたくないから文末に書き足しておく顔文字ひとつ(→_←)
039:広 そのむかし世界はもっと単純で広げた両手で語れたものを
040:すみれ 夕焼けが静まったあと薄っすらとすみれ色めく空を見ている
【Elsa】
041:越 抜かれてはまた追い越して海までを少年たちの自転車が行く
042:クリック やみくもにクリックしても開かない隠しファイルが心の隅に
043:係 全員におかしな顔をさせるのはシャッターを押す係の特権
044:わさび 気の抜けたわさびのような皮肉しか言い返せずによけい悔しい
【Anne】
045:幕 幸福な場面を描いた幕がない歌劇を見終えすこし疲れる
046:常識 非常識であればあるほど英雄視したがる若者たちの価値観
047:警 降る雨にヘッドライトも警笛も行き先さえもにじんで溶ける
048:逢 旧仮名のほうがなじむと思うからそこだけ「めぐり逢ひ」と書きたい
【Cécile】
049:ソムリエ 贈るならソムリエナイフ贈られるなら赤ワイン(二人で飲もう)
050:災 災いをもたらすという伝説のルビーの行方を本に追いゆく
051:言い訳 切り分けるすべがないのを言い訳にひとつの梨を交互に齧る
【Elsa】
052:縄 縄跳びに次つぎ入る気安さで集まり家族と呼び合えばいい
053:妊娠 妊娠はあした見る夢 海からの風に翻弄されるパーカー
054:首 こころもち首をかしげた肖像をながめる同じポーズになって
055:式 数式を解きほぐしゆく白墨の動きのよどみなさに見惚れた
056:アドレス 「舞踏会の手帖」に比べケータイのアドレス帳は便利だけれど
【Cécile】
057:縁 ハンカチの白いレースの縁取りに似た美辞麗句ばかり言う人
058:魔法 ひとふりで魔法がかかりゆっくりと弦楽器から奏で出される
059:済 うやむやに済ませてもいい思いきり西瓜の種を遠くへ飛ばす
060:引退 引退という語を献上したくなる古い時計が運び出される
【Anne】
061:ピンク 気晴らしに買ってきたまま口紅のピンクはとうに流行遅れ
062:坂 人生を坂に喩えたがる人の話にぼんやりあいづちを打つ
063:ゆらり 街中が午睡のさなか夢を見るように氷がゆらりと溶ける
【Elsa】
064:宮 おべっかが苦手で出世に縁のない宮廷音楽家に乾杯を
065:選挙 録画しておいた映画のなかごろにひと月遅れの選挙速報
066:角 三角に折っては返しのど飴の包みを小さな鶴に変えゆく
067:フルート 夏風邪がまだ治らないフルートが恋敵なら油断できない
【Cécile】
068:秋刀魚 骨だけをきれいに残せた日に限りサンマを「秋刀魚」に昇格させる
【Elsa】
069:隅 水入れを飽かず眺めた隅々に絵の具の青が行き渡るまで
【Anne】
070:CD CDで聴いてもいまだにその箇所で歌声が飛びそうな気がする
【Elsa】
071:痩 痩せ我慢しているときの表情がどこか少年めいて愛しい
072:瀬戸 瀬戸際の主役を一時停止させ無粋な電話を黙らせに立つ
【Cécile】
073:マスク 念のため荷に詰めてきた包帯もマスクも幸い使わずじまい
074:肩 天使への昇級試験を待つような肩甲骨が浜辺にならぶ
075:おまけ 50音表の最後の一文字が何だかおまけみたいに見える
076:住 この街に住むなら画家の名をつけた狭い通りのアパートがいい
077:屑 ときどきは子供っぽさを覗かせるパン屑ひざの上にこぼして
【Elsa】
078:アンコール この夏の思い出ひとつアンコールするなら虹を見た雨上がり
079:恥 うっかりと水着の跡をつけたまま背あきのドレスを着る恥ずかしさ
080:午後 ホノルルはいま七時だと言われても午前か午後かよくわからない
081:早 人の名が早口言葉になりそうな異国のことばの不思議な響き
【Cécile】
082:源 もう夏も終わりというのに砂浜を震源として広まるうわさ
083:憂鬱 憂鬱とつぶやいたあとの唇のかたちでいるから慰めにきて
【Elsa】
084:河 サンマルタン運河が窓から見えるならあとはワインがあるだけでいい
【Anne】
085:クリスマス クリスマスツリーを真夏に飾る国より遠くいてデュラスを読みぬ
086:符 見るものを片っぱしから指さして子どもがつけて回る疑問符
【Cécile】
087:気分 低音のコントラバスがふさわしい今の気分をあらわすならば
088:編 父親のゴルフ雑誌のそこだけは楽しみに読む編集後記
089:テスト 空白はなんだか苦手「あ」と書いたテストメールを送受信する
090:長 水に濡れ乾かすたびにふくらんだ潮の香のする『長いお別れ』
【Elsa】
091:冬 マネキンが秋冬物に衣替えしてバカンスももうすぐ終わる
092:夕焼け もう季節外れと思う海沿いのホテルの夕焼け色のカクテル
093:鼻 鼻と鼻こっそり合わせてみたかった従兄をまねて従兄の犬と
094:彼方 忘却の彼方ですけどリカちゃんと昔はおなじ年齢でした
【Anne】
095:卓 枕辺に残すほどではないメモを走り書きして食卓に置く
096:マイナス 音引きとマイナスをつい間違えて変換されぬカタカナ言葉
【Elsa】
097:断 習慣で差し伸べられているだけの手と知ったから断わっていい
098:電気 窓を閉め電気を消して出てゆこう恋ひとつぶん身軽になって
【Cécile】
099:戻 羅紗紙がやぶれた本を強引に箱に戻して終える少女期
100:好 「好き」という動詞を活用させるのはたやすい 文法上のことなら
001:笑 プロヴァンス訛りで話す人たちの笑顔に会って夏がはじまる
002:一日 クロスワードパズルひとつで一日は長くなったり短くなったり
003:助 見るからに一癖ありげなまなざしの助演女優のほうに引かれる
004:ひだまり 選ぶならひだまりよりも水たまり裸足になって歩きたいのは
【Elsa】
005:調 かしましく調弦されるヴァイオリン賑わうカフェの談笑のごと
006:水玉 十代の少女とおなじ水玉のリボンと気づきそっとほどいた
007:ランチ 避暑地には避暑地の作法 朝食を兼ねたランチをベッドの上で
008:飾 飾らない言葉もあまいささやきも恋人からは聞かせてほしい
【Cécile】
009:ふわふわ シャンプーを「ふわふわ」と呼び母親の指の動きに髪をゆだねた
010:街 街角に貼られたダンスパーティのビラ初めてのドレスで行こう
011:嫉妬 ラジオから古いシャンソン恋しさや嫉妬を鳥になぞらえながら
012:達 ささやかな達成感で振り返るいま自転車で来た坂道を
013:カタカナ カタカナか漢字か区別がつくように力と書くとき力を込める
【Elsa】
014:煮 大鍋の野菜とろとろ煮崩れてゆくそばで読むロマンス文庫
015:型 つまらない夏だったっけ兄たちの模型づくりを手伝えなくて
016:Uターン 南仏の生まれだったらパリを捨てUターンしても構わないけど
017:解 明日はまだ鼻歌まじり難解なことはあさって気にすればいい
018:格差 世代間格差を嘆く恋人のくちびるに差し入れるポッキー
【Anne】
019:ノート もう開くこともないのに捨てられぬノートにいくつ詩人の名前
020:貧 微苦笑で思い出すこと貧しさを美化してひそかに憧れていた
【Cécile】
021:くちばし くちばしと父がからかう不満げな顔で見上げる私のことを
【Elsa】
022:職 とりあえず職業欄に特大のひまわりの絵を描き入れておく
【Cécile】
023:シャツ 黄のシャツは勝者のあかしTVでは連日ツールドフランスばかり
【Elsa】
024:天ぷら 山盛りの天ぷらきれいにたいらげて増す一方の座の賑やかさ
025:氷 氷にも炎にもなる激しさの主人公から目がはなせない
026:コンビニ 〒や卍はあるのにコンビニの記号が地図にまだないなんて
【Cécile】
027:既 ありふれた既製服から思いきりはみ出している私はわたし
028:透明 透明にしておくという約束の父とのあいだに秘密がきざす
029:くしゃくしゃ くしゃくしゃにしたりされたりした後に互いの姿を見て笑い合う
030:牛 牛乳が熱くてできた火傷とはちがう痛みの舌をなだめる
【Anne】
031:てっぺん てっぺんに苺がのったケーキめく少女ら笑いさざめくときに
032:世界 受け継いだ良識に似て古びても捨て得ぬ『世界文学全集』
【Cécile】
033:冠 「私たち」と呼ぶをためらう関係の不定冠詞のようなあやうさ
034:序 物事の順序を説かれマニキュアをため息重ねて乾かしている
【Elsa】
035:ロンドン バカンスの最中でさえロンドンの市況を絶えず気にかける人
036:意図 要注意図に乗りすぎると冗談のつもりがケンカで終わってしまう
【Anne】
037:藤 色の名の豊かなることあかるきを藤色濃きをむらさきと呼ぶ
【Cécile】
038:→ 大袈裟にしたくないから文末に書き足しておく顔文字ひとつ(→_←)
039:広 そのむかし世界はもっと単純で広げた両手で語れたものを
040:すみれ 夕焼けが静まったあと薄っすらとすみれ色めく空を見ている
【Elsa】
041:越 抜かれてはまた追い越して海までを少年たちの自転車が行く
042:クリック やみくもにクリックしても開かない隠しファイルが心の隅に
043:係 全員におかしな顔をさせるのはシャッターを押す係の特権
044:わさび 気の抜けたわさびのような皮肉しか言い返せずによけい悔しい
【Anne】
045:幕 幸福な場面を描いた幕がない歌劇を見終えすこし疲れる
046:常識 非常識であればあるほど英雄視したがる若者たちの価値観
047:警 降る雨にヘッドライトも警笛も行き先さえもにじんで溶ける
048:逢 旧仮名のほうがなじむと思うからそこだけ「めぐり逢ひ」と書きたい
【Cécile】
049:ソムリエ 贈るならソムリエナイフ贈られるなら赤ワイン(二人で飲もう)
050:災 災いをもたらすという伝説のルビーの行方を本に追いゆく
051:言い訳 切り分けるすべがないのを言い訳にひとつの梨を交互に齧る
【Elsa】
052:縄 縄跳びに次つぎ入る気安さで集まり家族と呼び合えばいい
053:妊娠 妊娠はあした見る夢 海からの風に翻弄されるパーカー
054:首 こころもち首をかしげた肖像をながめる同じポーズになって
055:式 数式を解きほぐしゆく白墨の動きのよどみなさに見惚れた
056:アドレス 「舞踏会の手帖」に比べケータイのアドレス帳は便利だけれど
【Cécile】
057:縁 ハンカチの白いレースの縁取りに似た美辞麗句ばかり言う人
058:魔法 ひとふりで魔法がかかりゆっくりと弦楽器から奏で出される
059:済 うやむやに済ませてもいい思いきり西瓜の種を遠くへ飛ばす
060:引退 引退という語を献上したくなる古い時計が運び出される
【Anne】
061:ピンク 気晴らしに買ってきたまま口紅のピンクはとうに流行遅れ
062:坂 人生を坂に喩えたがる人の話にぼんやりあいづちを打つ
063:ゆらり 街中が午睡のさなか夢を見るように氷がゆらりと溶ける
【Elsa】
064:宮 おべっかが苦手で出世に縁のない宮廷音楽家に乾杯を
065:選挙 録画しておいた映画のなかごろにひと月遅れの選挙速報
066:角 三角に折っては返しのど飴の包みを小さな鶴に変えゆく
067:フルート 夏風邪がまだ治らないフルートが恋敵なら油断できない
【Cécile】
068:秋刀魚 骨だけをきれいに残せた日に限りサンマを「秋刀魚」に昇格させる
【Elsa】
069:隅 水入れを飽かず眺めた隅々に絵の具の青が行き渡るまで
【Anne】
070:CD CDで聴いてもいまだにその箇所で歌声が飛びそうな気がする
【Elsa】
071:痩 痩せ我慢しているときの表情がどこか少年めいて愛しい
072:瀬戸 瀬戸際の主役を一時停止させ無粋な電話を黙らせに立つ
【Cécile】
073:マスク 念のため荷に詰めてきた包帯もマスクも幸い使わずじまい
074:肩 天使への昇級試験を待つような肩甲骨が浜辺にならぶ
075:おまけ 50音表の最後の一文字が何だかおまけみたいに見える
076:住 この街に住むなら画家の名をつけた狭い通りのアパートがいい
077:屑 ときどきは子供っぽさを覗かせるパン屑ひざの上にこぼして
【Elsa】
078:アンコール この夏の思い出ひとつアンコールするなら虹を見た雨上がり
079:恥 うっかりと水着の跡をつけたまま背あきのドレスを着る恥ずかしさ
080:午後 ホノルルはいま七時だと言われても午前か午後かよくわからない
081:早 人の名が早口言葉になりそうな異国のことばの不思議な響き
【Cécile】
082:源 もう夏も終わりというのに砂浜を震源として広まるうわさ
083:憂鬱 憂鬱とつぶやいたあとの唇のかたちでいるから慰めにきて
【Elsa】
084:河 サンマルタン運河が窓から見えるならあとはワインがあるだけでいい
【Anne】
085:クリスマス クリスマスツリーを真夏に飾る国より遠くいてデュラスを読みぬ
086:符 見るものを片っぱしから指さして子どもがつけて回る疑問符
【Cécile】
087:気分 低音のコントラバスがふさわしい今の気分をあらわすならば
088:編 父親のゴルフ雑誌のそこだけは楽しみに読む編集後記
089:テスト 空白はなんだか苦手「あ」と書いたテストメールを送受信する
090:長 水に濡れ乾かすたびにふくらんだ潮の香のする『長いお別れ』
【Elsa】
091:冬 マネキンが秋冬物に衣替えしてバカンスももうすぐ終わる
092:夕焼け もう季節外れと思う海沿いのホテルの夕焼け色のカクテル
093:鼻 鼻と鼻こっそり合わせてみたかった従兄をまねて従兄の犬と
094:彼方 忘却の彼方ですけどリカちゃんと昔はおなじ年齢でした
【Anne】
095:卓 枕辺に残すほどではないメモを走り書きして食卓に置く
096:マイナス 音引きとマイナスをつい間違えて変換されぬカタカナ言葉
【Elsa】
097:断 習慣で差し伸べられているだけの手と知ったから断わっていい
098:電気 窓を閉め電気を消して出てゆこう恋ひとつぶん身軽になって
【Cécile】
099:戻 羅紗紙がやぶれた本を強引に箱に戻して終える少女期
100:好 「好き」という動詞を活用させるのはたやすい 文法上のことなら
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by nomaiganoma
| 2009-11-30 23:59
| 100首全体